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ヴィッツでＧＯ！(13)(11/24)
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二人は中庭を通って部屋に戻った。部屋に帰るとビールを冷蔵庫から出してきて乾杯する。酒のつまみは今日狩ってきたいちごだった。 一応、乾杯する。 「こんないいトコなのに来られねーなんて、気の毒さ」 「―――」 知り合いが急に旅行をキャンセルした。 こいつの兄貴と違って、こいつはそのことを、何も疑っていない。 そうだろうから連れてきたんだけどな。 「まあ…そーだな」 少し間をおいて、姫発は曖昧に答える。 天化はガイドブックを興味深そうにめくりながら話す。 「発ちゃん、明日の昼だけど」 「なんだ？」 「三島で鰻が名物なんだって」 「……ふーん」 そんなのを確かに、買ったガイドブックで読んだ気がする。 「俺っちそれがいいさ」 「そお、だな」 いちご狩りに猪最中に鰻。食い物ツアーじみてきたな、なんか… まあ、楽しいような気はするからいいんだけど。そう思いながら、姫発はビールを呷った。ひとつ缶を空けると、冷蔵庫に行って今度は日本酒を出してくる。どうせ自分で飲もうと思って買った酒だ。今日は飲んでやる。 「お前も飲むか？」 「いいさ？」 姫発は旅館に備え付けのコップをふたつ出してきた。夜は長い――まだ９時前だ。 どこか夜遊びに行こうにも修善寺はそういう街じゃないから何もない。蛙の声がなきやまない自然の中で、その雰囲気を堪能する以外何もない。 こんな静かな夜に。 今日の姫発はピッチが早かった。天化は今日あったこと、明日やりたいことを楽しそうに話す。それを頷いて聞きながら、ぽつりと言った。 「なあ、天化」 「なにさ？」 「……なんでもねーよ」 「？」 「発ちゃんは明日やりたいこととかねーさ？」 「…別に…」 「だって、発ちゃんだって、ココに来たいと思ったっしょ？」 だから旅行に来たはずなのに。 ――違うんだよ、そうじゃない。ここまで来たのは意地だ。 姫発はほんとうのことを天化に話すつもりもなかったが、酒が入って、つい緩めてしまったものはある。 「そんなのいいじゃねえかよ。それよりさ」 「――なにさ？」 「昔話、してやろうか。俺の」 |
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