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「そういえば太公望、何しに来たんだい？」 「……ホントに百年元に戻らぬのかと聞きに来た」 「そう思うけど」 「ホントであろうな？結婚してから元に戻りました、ではまた混乱するだけではないか」 雲中子は籠の杏の種を仕分けしながら呟く。 「なんなら一回武王をここに連れてくる？最新の設備で調べてあげるけど」 「…まっさらな人間を崑崙に連れてこいと言うのか？」 とりあえず酸欠になりそうだ。それはいい。それはまあなんとか出来るかも知れないが、雲中子の診療台に上げるというのも――どうなのだろうか。 「ま、結婚式の前に一度様子見に行こうか」 「姫発も、お主の顔は見たくないであろうがな」 「あ」 雲中子が声をあげた。 その次の瞬間、彼の姿が膨大な杏の種に埋もれる。太公望は言葉もなくそれを眺めていた。 「…………」 雲中子は杏の種の小山の中から姿を現す。あーあ、と呟いた。 「ぐちゃぐちゃだのう」 「また整理しなおさないとダメだなあ」 太公望は、これは手伝ってやらねばさすがにと思って、杏の種をいくつか拾った。とりあえず籠にしまっていく。雲中子も同じ作業を黙々と続けた。 しばらく二人でそうしていた。 そのうち、ナンバーをおおまかに分けようということになる。籠をいくつか用意して、雲中子が指示したとおりの仕分け方で、杏の種をいくつかの籠に分けていった。 杏をひとつ手にとった太公望が、横で杏を拾っている雲中子に声をかけた。 「雲中子」 「なんだい？」 「この杏はナンバーが振られておらぬが、……」 雲中子は、太公望の手のひらのうえの杏をしげしげと眺めた。 「王サマ？」 天化が武王の私室を覗くと、姫発の姿は見えなかった。もう夜遅い。男の時は抜け出してよく遊びに行って、天化も晩飯までは追わなかったが、今は女の子だ。夜も遅い。 どこ行ったさ？ 天化は西岐城の中を探した。途中、太公望に会った。崑崙に行って戻ってきたばかりだという太公望が姫発の行方を知るよしもない。 しかし、と前置きして、太公望は天化にあることを教えてくれた。 「結婚決まったさ？」 「ああ。北伯候である崇黒虎とな。政略結婚という奴だが、いたしかたあるまい」 「王サマそれでいいさ？」 「納得はしておったようだが……やはり、そうもいかぬか」 太公望は溜息をついた。天化は、太公望の乗っていた四不象をいきなり奪う。 「カバっち借りるさ！」 「て、天化くん？」 カバっち、もとい四不象は驚いて悲鳴をあげる。しかし天化はひるまなかった。 「王サマ探してくるさ！」 「お帰りなさい、師叔」 天才道士が後ろから声をかける。おお、楊ゼン――太公望は答えた。 「雲中子さまはなにかおっしゃっていましたか？」 「実のある答えは引き出せんかったな」 |
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