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「すいません」 突然、黄飛虎はぺこりと頭を下げた。なんのことかと姫発は思う。なんか…さっきの「可愛らしくなっちまいましたね」なんて言いぐさに対するフォローでないことだけは判る気がした。 「なにが？」 「いや…天化の奴がメーワクかけたみてえですから」 「え……」 姫発は一瞬、止まる。 「どーもアイツ帰ってこねえと思ってたら…そんな話になってたんですね」 「あのさ、武成王」 「なんですかい？」 姫発は武成王を見上げてじっと見つめた。 「天化に…このコト言わねえでくれよ」 「は？」 このコトって…武王が女のコになってしまったということ、か？ そういう誤解を与えたと知って、姫発は手を振って言い直す。 「え、違――このコトで天化が悪いってことねえだろ？！知らなかったんだからさ！！絶対天化に、このコトでなんか言ったりしねーでくれってコトだよ！！」 「はあ……」 天化を絶対、責めないで欲しい。 そんな姫発の必死の言葉に、わかりました、と黄飛虎は答えた。 太公望はさらに事情を説明した。早々に婿を取って、公表しなければならない。 「婿取るんですかい？」 「そう…みてえ」 素っ頓狂な声をあげた黄飛虎は、姫発の顔をもう一度じっと覗き込む。 「お主も、これぞと思うものがあれば推薦してもらいたい」 太公望はそんなことを言い出す。こやつではな…黄飛虎の顔を見た。三百枚目のファイル。人望とかそういう面はかなり申し分ないが、いかんせん年がのう… 太公望の胸中など思いもよらない黄飛虎は、大変ですねえ、と姫発に笑いかける。そんな、見るからに「苦笑」という表情で笑われても、何の足しにもならなかった。 「まあ、男はやっぱどっしりかまえてんのが一番ですから」 「………」 姫発は黙る。今までの自分はどう思われてたんだろう。 「けどまあ、結局は惚れた相手と添い遂げるのが一番っすよ」 いや…そんなこといきなり言われても。 希望なんか――ない。ないはずだ。俺には。 「ま、ウチにも息子四人いますから、どれでも好きなの選んで貰ってかまいませんよ？…って、一人はまだ小さすぎるか」 最後にそう言って、黄飛虎は豪快に笑い飛ばした。姫発は返す言葉もなかったし、そのまま黙って西岐城に戻った。 「武王？！なんでそんなお姿にっ！！」 可愛らしくなっちまいましたね、とどっちがマシだろうか。姫発はちょっと悩んだ。周の大将軍、南宮活は、姫発の肩をつかんでだーっと涙を流す。 「可愛くていいではないか、これはこれで」 「太公望、オメーな…」 太公望はよくわからないフォローを入れた。 「武王！俺は武王がどんなお姿になられても、武王の味方です！！強く生きて下さい！！」 「あ……え、まあ……そーだな」 がくがくと肩を揺さぶられて、姫発は返事とも言えない返事を返した。 まあでも心配してくれるんだし……ま、いいかと思ったのだった。 というかこれが今までで一番マシな反応だと思ったのは、まわりが剛毅な人間ばかりだったからだそうか？ |
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