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とぼとぼと姫発は太公望のあとをついて歩いた。 「なあ、太公望」 「なんだ？」 「俺の結婚ってどーなってんの？」 太公望は歩みを止める。 「…まだ、決めてはおらぬが」 「そっか」 姫発は俯いた。太公望は振り返って彼女を見る。 「姫発よ」 「…なに？」 「お主、希望はあるのか？」 ……え？ 「な、…なんだよ、希望って」 ためらいながら、姫発は応える。そんなことを言われても―― 「添えるかどうかは判らぬが、お主の意見は最大限尊重してやるぞ？」 そんなことを言われても。 「……ねーよ」 そう答えるしかなかった。 周のために立派な婿取ってやろーじゃねーかよ！そう啖呵を切った。あの時はムカついて仕方なかったからそう言ったけど、ちょっと時間が経ってしまうと、自分から積極的に動こうという気にはなれない。 太公望の奴だって考えることあるだろーし。婿を取れなんて言ったのはこいつだ。 姫発はとぼとぼと歩いた。 別に、希望なんかない。そのはずだ。 「マジっすか？」 黄飛虎は、姫発の顔を覗き込んで言った。 事情を説明したのは太公望だった。天化はあれ以来、家に戻っていなかったからだ。黄飛虎は、しばらく呆気にとられていたかと思うと、やがて豪快に笑い出し、それが止むと「マジっすか？」とそう言ったのだ。 「事実だ。仕方あるまい」 笑われて相当ショックを受けた姫発に代わって答えたのは太公望だ。そして一応フォローを入れてみる。 「しかし武成王、そこまで大ウケすることはあるまい。こやつはこれでも人生最大の危機に直面しておるのだ」 それは実はなんのフォローにもなっていなかった。しかし武成王は反省して、姫発の顔をもう一度覗き込むと頭に手をやって髪をぐしゃっとやった。 「すいません」 「………」 そして彼なりにフォローを入れる。 「まあ…にしても、可愛らしくなっちまいましたねえ」 「………」 やっぱりなんのフォローにもなっていなかった。 |
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