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「ふっざけんなー！俺を誰だと思ってんだ！」 姫発は一言怒鳴ってだっと飛び出す。勿論、俺は姫発だ、と言えるわけもない。 「どーしたさ？」 「あ、天化」 ナンパしてきた男を適当にあしらった蝉玉は、後ろに天化の声を聞いた。 「どーしたのよ？どこ行ってたの？」 「向こうで煙草吸ってたさ」 「あ、そう」 「王サマはどーしたさ？」 天化はあたりを見渡す。姫発の姿は見えない。 「え……ナンパされたら走って逃げた」 「はあ？」 あの王サマがそうすると言うのも。天化だってそう思う。 「服買ったさ？」 天化は話題を変える。 「あ、うん」 「荷物どーしたさ？」 蝉玉は紙袋もなにも持っていない。天化はそれを指摘した。 「あ、タダで届けてくれるって」 「…そーなのさ？」 そう、天化のお役目は結局なかったのだった。 「にしてもアイツ、どこ行ったんだろ」 「そーさね」 蝉玉と天化は、辺りを見渡して姫発の姿を探す。だっと駆け出して行ってどこまで行ったのか――。 そう思っていたら、彼女は戻ってきた。 姫発は下を向いたままとぼとぼと歩いてくる。 「あ」 「王サマ？」 蝉玉と天化はほぼ同時に声をあげた。けれど姫発は反応しない。 「王サマ？」 「ちょっとアンタ、どーしたのよ」 きれいな色の着物に袴姿の女の子な姫発は、ぼーっとしたまま足だけをずるずると引きずるように歩いていく。 「王サマ！」 天化がその腕を掴んだ。 「……あ……」 そこでようやく姫発の足が止まる。顔を上げて、天化をじっと見つめた。 「………天化」 「ナニさ？」 「どこ行ってたのよ？！」 蝉玉が横から声をかける。けど、姫発は応えなかった。天化、と名前を呼んで、天化がそれに応えても、それにも応えなかった。彼女は――城に帰るまでずっとそんな様子だった。 |
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