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「じゃあ俺っち、外で待ってるさ」 天化は店先でそう言って煙草に火をつけて角まで歩いた。女の子の服を買うのに、天化がついてきたって当然することはない。荷物持ちという名目ではあったが、姫発は単に天化を連れ出したいだけだった。両手で持てない荷物になろうが、そんなのはあとで届けてもらえばすむ話なのだから。 天化の他にも蝉玉についてきてもらったのだから（というか、女の子の服を買うのだからそっちが本命だった）、本当に天化を荷物持ちにする必然性はあまりなかったのだ。それでも、言えば天化はついて来たし、そう思ったからわがままを言った。 なんでだろう。姫発は自分でも判らなかった。 「これなんか可愛いじゃない」 蝉玉は、いくつか店にあるものを物色して女の子な姫発に押しつける。なんだかんだ買い物はすぐ終わったのだ。いくつか買った中でひとつはそのまま着て帰ることにした。最初姫発が渋々着てきたのは蝉玉の服の中でも地味なものだった。歩くと、元は男だから、つま先はどうしても外を向く。それでスリットで歩けばスゴいことになりがちなわけで、姫発はつとめて内股で歩かざるをえなかった。 買ったものは結局、送料サービスで城まで運んでもらえるらしい。そう、ほんとうに、荷物持ちについてきてもらうことはなかった―― 「あれ？天化の奴、いないじゃない」 「どっかで煙草でも吸ってんじゃねーの？」 姫発と蝉玉が店の外に出ると天化の姿はなかった。まあ、どっかそのへんで暇つぶしをしているんだろう。二人はそう思った。女の子が服を買うにもけっこう時間はかかるのだ。 「見つかった？」 「うーん、こっちにはいないみたい」 二人は、近くの店先を天化を探して歩く。その前に影が立ちふさがった。 「どうしたの？彼女たち」 「え……」 顔を上げたのは姫発だった。見知った顔――― 「オメーら……」 つい声を上げる。元の姫発のナンパ仲間だった。ここでそういうお仲間に会ってしまうというのは、普段の行動の報いと言うべきか。彼らは、目の前の可愛い女の子が自分たちの遊び仲間の発ちゃんだと気づくはずもない。 「どっか遊びに行かない？」 （……………） ナンパ……された。 自分がやっていたことを思えば、ショックを受けるところではなかったかもしれない。プリンちゃんタックルをされたわけでもない。けど、そういう理屈より先に立って姫発にショックを与えたのは、「女の子だからナンパされる」という事実だった。 |
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