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「すまぬな、姫発」 わしは軍師だ。それ以上にはなれぬ。 太公望の答えはそうに決まっていた。姫発はそれが判っていて、それでも言いたかったことだった。断られたって仕方ない。けど、もし、太公望だったら。姫発は思ってしまったのだ。 「わしにはビーナスという許嫁がおるのだ」 「てめえ、そんっなに俺と結婚したくねえのかよ！！ふざけんなっ！！」 「ええい、冗談だ！冗談に決まっておるであろうが！！」 姫発はがーっとがなりたてたと思ったら、横にいて黙って話を聞いていた天化にいきなり泣きついた。 「天化っ！俺そんなにかわいくねえかな？！なあ、どう思う？！」 「えっ……」 いきなりそんなこと言われても。 客観的には、「かわいいよ」と言って貰っても特に嬉しくはない状況だ。けど、嬉しくはなくたって、かわいくないと言われるよりはいいのかもしれない。姫発がそんなことを思ってしまうのは、完全にソフトがハードに引きずられている状態で、まったくもって太公望の見立てた通りだった。ハードが女の子だからって、そこまで中身が女の子にひきずられなくても。 「え、王サマ美人だと思うさ」 「そんなこと言われたって嬉しくねーよ！！」 この支離滅裂が……太公望は内心頭を抱える。まして女の子慣れしていない天化は、今の姫発をどう扱っていいのかよく分からなかった。 「もういいよ！」 「……なにがさ？」 姫発は、きっと軍師を睨んで、決意するかのように一度結ばれた口元を開く。 「そこまで言うんだったら立派な嫁さんになってやろーじゃねーかよ！周のためにいい男掴まえればいいんだろ？！腹括ったよ！やってやるよ！！」 お国のために、いいお婿さんを迎えようと、彼女は健気にも決意した――らしい。 反発力が面白い方向に行ってしまった。軍師は思った。 こんな話なので時系列は無視しています。念のため。 |
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