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ハイテンション・ハイライト -----６-----
カズキが推理を披露する。 「考えてもみろ、この事件は最初からおかしかったんだ」 「なにが？」 タクヤが合いの手を入れる。ダイはカズキの言葉を待った。そして、カーネルも。 「悪太を誘拐するのに、なんであいつの部屋でやる必要がある？他にいくらでも機会はあるだろう。自室から誘拐なんて、一番内部犯行を疑われるセンだ」 カズキは続ける。どこかひっかかっていた点をひとつずつクリアにしていった。 「悪太が外に出る機会だってあるだろうし、その時を狙った方がよっぽど簡単だ。中にいる時より、外にいる時に誘拐した方がよっぽど手っ取り早い」 「確かに、若君は毎日お散歩に出る時間がございます」 「カズキくん、それで？」 「最初から内部犯行に見せかけるために、わざわざ悪太の寝込みを襲ったんだ。大使館内で情報を遮断するために。おおっぴらに悪太の捜索が出来ないようにするためにな」 逆転の発想だった。 王子の寝室を襲撃できたのは、内部犯行だから。今までそう考えていた。けれど逆に、内部犯行に見せかけるために、わざわざ王子の寝室を襲撃したという。 「それに今、シャランラもキャプテンシャークも日本にいない」 「それがなにか関係があるのですか？」 「キャプテンシャークが本国にいて、シャランラは旅行中。そのタイミングを知ってた奴が、この時期に悪太を拉致した。妙に周到だと思ったんだよ。シャランラとキャプテンシャークって言や、言ってみりゃ悪太の強力な援軍だからな」 喋り通しのカズキはひと息つく。喉を唾で潤して、彼は更に推理を進めた。 「敵はそれだけ悪太の内情を理解してるってことだ。しかも、この事件にオレたちが巻き込まれた。シリアスとカーネルに呼ばれてな。そして、オレたちが捜索を始めると、次々に邪魔が入った」 タクヤとダイは、カズキの言葉を聞きながら、さっきまでの展開を思い出す。確かに、悪太の捜索を開始すると、何度も攻撃型ロボットの襲撃があった。 「なあ…タクヤ、ダイ。オレたちをこの事件に巻き込んだのは誰だ？」 「シリアスと、カーネルのじーさん」 タクヤが答える。カズキがさらに畳みかける。 「シャランラのこと、キャプテンシャークのこと、オレたちのこと。そこまで悪太の事情に精通してるって言ったら、誰が一番だと思う？」 「そりゃカーネルのじーさんと…それから」 それから。 タクヤは答えながら、しかし言葉につまる。 それから。 悪太の事情にそこまで詳しいのは、彼の執事であるカーネルと、それから。 「そうだ――シリアスだ」 カズキは言い切った。 「な、何故シリアス様がそのような！」 「なんで？！シリアスがそんなことするわけ、」 カーネルとダイが同時に同じ疑問をぶつける。けれどカズキは冷静さを崩さなかった。彼は動機からではなくて、状況を推理してこの結論を導いた。 「これは動機から導いた話じゃない。可能性の話だ。おかしいと思わないか？オレたちは、シリアスの誘導で向かった場所で何度も襲撃された」 シリアスに送られた地図。シリアスに指示されたポイント。ドランは何度もそこで敵メカに遭遇したのだ。 「内部犯行説をまっさきに打ち出して、大使館内で情報を遮断したシリアスが、なんでオレたちをわざわざ疑う必要があるんだ？この話は最初からおかしかったんだ」 『いや申し訳ありません、私としたことが…ですがこれもなにかの縁、兄上の救出に協力していただけませんか』 あの時のシリアスはボケ倒しているのだと思った。けれどそうじゃないのかもしれない。彼は最初から、論理矛盾はさておいてタクヤたちを引き込んだのだ。 ずっと黙っていたタクヤが、ぽつりと呟くように言う。 「シリアスが…悪太を誘拐したってのか？」 「多分な。それに、」 「それに？」 言葉を切ったカズキに、ダイが先を促した。カズキは真剣な面持ちで言う。 「シリアスは多分、判ってる。あからさまにオレたちを襲撃して、オレたちがシリアスを疑うところまで、多分判ってやってるはずだ」 三人組とカーネルはとりあえず一度大使館に戻ることにした。カーネルは各方面に連絡を取っている。予想通りというべきか、シリアスとは連絡が取れない。シリアスの車も行方がつかめなかった。タクヤたちは空影にシリアス捜索を命じる。 カーネルが通信室から戻ってくる。 「とりあえず、シャランラ様に連絡を取るようにして、キャプテンシャークにも一応今の状況は伝えましたが…」 「他には？」 カズキが促す。カーネルは状況を伝えた。 「脅迫状の続きは来ていません。なるべく秘密裡に情報を取るようにしましたが、手がかりもつかめません」 「公開捜査にするわけにはいかないか」 「それは…」 カズキの言葉にカーネルが躊躇する。それはちょっといろいろな面で問題がある。誘拐事件であるから、最悪、人質の命に関わる問題だ。 「ホントにシリアスなのかな」 ダイが呟く。まだ信じられない、そういった表情だ。 「とにかくシリアスとっ捕まえてみりゃわかるだろ」 タクヤが言った。そのタクヤの持つゴルドシーバーが点滅する。 「どうした？！」 『主！シリアスの車を見つけたでござる！』 空影の声だった。 タクヤ、カズキ、ダイ。そしてカーネル。四人はドランに乗り込んだ。空影の案内でドランを走らせる。 「みんな、妨害があるかもしれない。合体だ！」 タクヤが合体を指示した。 一方、みたび廃墟ビル。 囚われの身のワルターは、拘束された不自由な身で、なんとか手がかりを探し回る。だが、窓は高い位置に取り付けられ、ここがどこかも判らない。ワルターは疲れ、ひとまず休もうと、壁に背をつけて座り込んだ。 「はあ」 首を回してため息をついた。 かすかな音が聞こえた気がした。 「ん？」 ワルターは耳をすませて、かすかな音に聞き入る。壁からか？そう思って壁に耳をつけた。たしかに音がする。 カチコチカチコチ… どこかで聞いたことがある音だ。規則的に刻む針の音。確かこんな音をどこかで。 「う〜む、どこであったか…」 カチコチカチコチ… 音を聞きながら、ワルターは考える。はたと思いついた。 「そうだ、時限爆弾を仕掛けると確かこんな音が！」 カチコチカチ…カチ。 針の音が止まった。 「と、いうことは…」 瞬間、爆音が響く。遅れてワルターの悲鳴が室内に虚しく響き渡った。 「みょええええええ！！」 |