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ハイテンション・ハイライト -----５-----
『おのれお子たち…！ええい、カスタムギア軍団出動！！』 カーネルはカスタムギア軍団を繰り出す。若君を悪の手からお守りするためだ。あの、お子たち三人組から。 タクヤのノリの良さを、カズキもダイも知らないわけではない。むしろ知り尽くしている。しかしアドリブでここまでかますタクヤには、皆が皆、絶句で応じるしかなかった。 悪太誘拐設定をタクヤに振ったのはカズキで、タクヤはカズキの指示の通り、カーネルを思い切り挑発した。作戦は大成功だ。その感想を、カズキは次のように述べた。 「ノリノリだな、タクヤ」 「タクヤくん…」 『あ、主』 三人三様（二人＋一メカというべきか）に呆れてみたところで、カズキが突っ込んでみる。 「けどよ、ホコ天ストリップビデオ撮影を超える辱めってオレ思いつかねえんだけど」 「しかもテレビに出せないんでしょ？それって…」 ＴＶシリーズ第二十話「ワルターの大冒険」を思い出しながらカズキが言うと、ダイも順応する。結局お子たち三人組は、三人揃って悪ガキだった。 そして、悪ガキ三人組リーダー格の原島タクヤの見解というと。 「そりゃピーーーーー（放送禁止用語）しかねーだろ」 「そりゃ深夜枠でも無理だな…って、バカ言ってる場合じゃねーぞタクヤ！！」 ドランが衝撃で揺れる。カーネルが繰り出したカスタムギア軍団がはやくも追いついたのだ。 「よし応戦だ！ゴッドシルバリオン！」 「ゴーーーーーーーーーッド！！」 空の騎士ジェットシルバー、星の騎士スターシルバー、大地の騎士ドリルシルバー。そして炎の騎士ファイヤーシルバー。四人の勇者は合体し雄叫びを上げ、トライランサーを構える。ドランを追撃するカスタムギア軍団の前に立ちはだかり、両者は戦闘態勢に入る。 「ちょ、ちょい待ちタクヤ、ここまでだ！カットカット！！」 「ほえ」 カズキはタクヤからトランシーバーを奪い取り、叫ぶ。 「じーさん待ってくれ！今の全部ギャグだ！」 『なんですと？！』 ダイもタクヤも、一緒になってトランシーバーの前で怒鳴る。 「僕たち、悪太を攫ってなんかいないんだ！」 「本当だよ！なあ、オイラたちを信じてくれよ！」 こんな一幕のあと、カーネルはタクヤたちと合流した。 カーネルはまだ半信半疑で、タクヤたちは疑いを晴らすために、ドランのトランクまで開けてみせることになる。 カーネルはなかなか三人を信じない。当然と言えば当然だ。普通ノリだけで身代金百億とも言わないし、放送禁止用語を吐いてみせることもしない。 「ほんんっとーに若君の行方は知らないと言うのですか？」 「ゴメンゴメン、オイラついノッちまってさ」 てへへへへ、とタクヤは照れながら頭を下げる。それにしても迫真の演技だった。 「タクヤの演技、リアリティに満ちあふれてたしな。それに、悪太をテレビの前に出せないくらいの恥ずかしい目って、実際やりかねないしなコイツ」 「うん…タクヤくん、前科者だしね」 カズキの言葉に、ダイもしみじみ頷く。騙される悪太もバカはバカなのだが、それにしても普通は一国の王子を裸に剥いて、あまつさえビデオに録画してドッキリカメラに応募して賞金十万円をゲットしたりはしない。そこまでやった原島タクヤという少年に、多分不可能事はないような気が、カズキもダイもしたのだった。 しかし、二人の仲間の言い分にタクヤとしては反論がある。以下の如く。 「なんだよオイラだけ悪者かよ？！オイラたちはみんなでやったんだろ？！」 ――バシュン。 拳銃の音が鳴り響く。話が脱線したままのお子たちに業を煮やしたカーネルが発砲したものだ。老人の迫力に押され、お子たち三人は話をようやく前に進めた。 ドランを停車させたまま三人とカーネルは乗り込む。 口を開いたのはカズキ。 「悪いなじーさん、あんたを試させてもらった」 「何故そのような」 「オレはあんたを疑ってた。悪太の誘拐はあんたの偽装工作じゃないかってな」 カズキの言葉に、カーネルは即座に反駁した。 「何故私がそのような！」 「シリアスと組んで、悪太を抹殺するつもりだったとか…けどまああそこまで怒るってことは、あんたは悪太に危害を加えたりはしないだろ」 カズキはそこで言葉を切る。そしてカーネルの反応を待った。 カーネルはふるふると震え、そしてやおら顔を突っ伏して泣き出す。 「あんまりでございます！」 「じ、じーさん」 泣き出したカーネルに思わず声をかけてしまったのは、今までカズキの話を聞きっぱなしだったタクヤだ。だがカーネルには誰の声も届かず、彼は悲痛な声で訴える。 「この世の誰が若君の敵になろうとも、このカーネルだけは一生若君をお守りすると誓ったものを…私が何故若君にそのような…」 カーネルはおいおいと泣き続ける。老執事にとって、ワルターへの忠誠を疑われることはそれだけ心外だったらしい。 「この爺を疑うとはあんまりでございます！」 そんなカーネルの様子を、カズキはじっと見守る。そして彼は言う。 「悪かったよじーさん、オレもあんたを本気で疑ってたわけじゃない」 「「え？」」 カーネルが顔を上げた。そして、タクヤとダイもカーネルと同時にカズキの台詞に反応した。 「…どういうことですか？」 「カズキくん、どういうこと？」 「カズキ！」 『主！』 皆に問われ、カズキは息をつく。 「ちょっと、確かめたくてな」 「なにをでございますか？」 「カーネル、あんたは犯人じゃない。残るのは――シリアスだ」 |