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ハイテンション・ハイライト -----３-----
どうやら誘拐されたらしい。ワルターはそのことを認識すると、暗い室内を改めて見渡した。手足の自由がきかないから思うように部屋の中を調べられない。両足を縛られた状態で、歩くことすらままならないからだ。 広い室内には人影もない。物音もしない。この部屋には自分一人だ。 「もしもーし、誰かいませんかー」 ついうっかり低姿勢にどこかに向かって話しかけてみる。どんなピンチに陥ってもボケは忘れてはいけない。 そんなポリシーは彼自身にはないが、実際やっていることを見るとそんな状態だった。 ところで、誰かに向かって話しかけても回答があるわけがない。ことのほか短気なワルターは、回答のない状態に苛立ち、いきなり怒鳴り始める。 「ええい、卑怯者め！姿を見せよ！この私をワルザック共和帝国王子ワルター・ワルザックと知っての所行か？！おのれ悪党め！」 声が枯れんばかりに怒鳴ってみる。これを一人でやっているあたり、改めてワルターは騒がしい性格の持ち主だった。 ふと、悪い考えが浮かぶ。 「まさか…お子たちが？」 疑うのも当然と言えば当然だった。お子たち三人組が地球編でワルターに仕掛けてきた数々の所行を考えれば。 「えーいお子たち、とっとと姿を見せんか！もうお前たちに騙されはせんぞ！」 『ようやくお目覚めか。ワルター王子』 「へ？」 どこからか、声が聞こえた。おそらく室内のどこかにスピーカーがあるのだろう。 『――相変わらず騒々しいことだ』 今の声、聞き覚えはない。というよりも声自体が変声機を通したであろうコンピューターの合成音で、声から犯人の見当はつけられない。 しかしまあ。 お子たち、…ではない？どーもなにか違う。 ワルターはなんとなく首を傾げた。 というよりも、これは本当に組織的な誘拐だということか。 「なんの目的で私を誘拐したのだ！お前たちの狙いはなんだ？！」 ワルターは真剣な表情で叫ぶ。 おそらくこの部屋の中に、スピーカーと集音機が取り付けてある。どこなのかは判らないが。それが判ったところでどうなるわけでもないのだが、ワルターは声の方向を探ろうと部屋を見渡した。 声が応えて言う。 『それはこれからのお楽しみだ。せいぜい、助けが来るのを待つのだな』 「なに？！」 『お前には、仲間がいるのだろう』 声はそれきり途絶えた。 ワルターはうつむき、しばし考えこむ。 「仲間…？」 ついうっかり、一瞬、お子たちの顔が脳裡に浮かんでしまったりする。 ぷるぷるぷると思い切り首を横に振り、ワルターは自らの思考を思い切り否定した。 「なーんであいつらに助けられなきゃならんのだ！ええい、この程度の罠など、私ひとりで脱出してみせる！」 『――それから』 「へ？」 途絶えたと思った声が再び聞こえる。 『トイレは部屋の右奥だ』 「ずこっ」 トイレの位置を教えてくれるとはある意味親切な敵ではある。しかしワルターとしては、この場はずっこけざるをえなかった。 「シリアス様？」 カーネルが呼びかける。大使館の玄関前。先ほど乗り付けてきた自動運転の車内で、シリアスはなにやら通信しているようだった。 シリアスはカーネルに気づくとウインドウを開ける。 「今のところ、本国に異変はないようですね」 シリアスは通信回線を切り替えた。 「お子たち、聞こえますか？」 回線の向こうからタクヤの声がする。 『おう、聞こえるぜ！』 「捜索ポイントを指定しますので、これからそちらに向かってください」 『わかったぜ！』 「地図をこれからデータで送ります。ポイントは３Ａ―Ｘ…」 シリアスから送られてきた地図データを見て、タクヤたちはドランをその方向に走らせる。 「悪太の奴、どこ行ったんだよ、ったく」 タクヤが呟く。カズキは黙って考えていた。ダイがカズキの様子に気づき、話しかける。 「どうしたの、カズキくん」 「いや…なんでもない。ちょっとひっかかってな」 『主よ！』 スーパーカー形態のドランが叫んだ。 「ほえ」 タクヤがドランの叫びに反応して、顔を上げてウインドウ越しに外を見る。瞬間、顔がひきつった。 「て、敵襲？！」 「なんで？」 カズキとダイが交互に叫ぶ。現在位置は地図上のポイント３Ａ―Ｘにさしかかったところ。見慣れない謎のメカのいきなりの襲撃に、タクヤは叫んだ。 「アドベンジャー、応戦だ！！」 |