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「王サマ、今日のおやつは杏仁豆腐さー」 「え？そうなの？」 「俺っちが作ったさ」 天化はお盆をがちゃりと卓の上に置いた。 姫発は、杏仁豆腐なんて見慣れているのに、それでも物珍しそうにそれを眺める。 それがすべての始まりだった。しかし彼らはまだ、そのことを知らない。 今日の日のおやつが手作り杏仁豆腐だった。 お盆から杏仁豆腐をふたつ卓の上に置いて、スプーンも並べて、天化と姫発はこれからおやつの時間を過ごそうとする。 その時だった。 「天化にーさまー！！」 「…え？」 天祥の声だった。どこからだ？二人は声の方向を探るようにあたりを見渡す。 「天化にーさまー！！」 もう一度同じ声がする。 今度はどこからかすぐ分かった。下だ。 「天祥？」 天化は窓まで歩いて行って、がらりと開けると、弟の姿を見つけた。 「なにさ？天祥」 下まで聞こえるように、天化は大きな声で弟に呼びかける。 なにがしかの会話が交わされるのを、姫発はスプーンに手をつけず待っていた。 「ゴメン、王サマ。ちょっと下行ってくるさ」 「え？そーなの？」 「先に食ってていーさ」 天化は部屋まで戻ってきた。ずいぶん時間がかかってしまった…が。王サマは…待ってるだろうか。あの王サマはあれでものすごく気遣いをする。ひとくちくらいは口につけているかも知れないが、待ってるかもしれなかった。 「王サマ、待たせたさっ」 がらっと天化は扉を開ける。 「…王サマ…？」 迎えるはずの声がない。もう一度、声に出した。王サマ？ そして――部屋全体を見渡す。 「王サマ！！」 |
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