翌日のことだ――
晩飯前になって、天化はばたばたと部屋を出ていった。そのまま帰ってこないから、姫発は竹簡を読みながらぼーっと待っていた。

しばらくして天化は、盆をふたつ抱えて戻ってきた。
「え」
「晩メシさ」
「………」
天化が作ってきたんだろうか。野菜ばっかりで肉っ気のないシンプルな料理と米の飯。そして、豆腐となめこの味噌汁。ひとつ受け取ってまじまじと料理を見てしまう。
「…ナニさ？」
「いやお前、ホントにメシ作れんだな」
「崑崙じゃ毎日作ってたさ」
「……そっか」

天化は晩飯を卓の上に載せると、お茶を取りに行った。帰ってくると何事もなかったかのように姫発の前に座る。お茶を注いだのは姫発のほうだった。
「ホラ」
「どうもさ」
「……これって…」
「これは俺っちが勝手に作ったんだから、賭けとは関係ねえさ」

そう。豆腐となめこの味噌汁。その場を乗り切ろうとして口走ったのは――あれは何日前のことだ？


「あ、…ありがとな」
「いいからさっさと食うさ。メシが冷めるさ」
二人で向かい合わせにごはんを食べた。いつもどおりの晩だった。
「天化」
「…ナニさ？」
「いや、美味いよコレ」
「………」


いつもどおりの晩だった。食べ終わるとお茶を飲んで、天化が厨房まで皿を下げに行って帰ってくると、お茶のおかわりを持ってきていた。
姫発は受け取って天化に茶をついでやる。のどかにお茶を飲んでいると、天化が切り出した。
「王サマ」
「……なんだよ？」
「こないだの賭けの話さ」
――…………

「…なんだよ？」
もう一度問う。ナシにしたつもりだった。なかったことにしろと言った。冗談だと思ってくれ。気にするなと言った。
「まだ覚えてるさ？」

「……ああ」

「豆腐となめこの味噌汁って言ったじゃねえか。それでいいよ」
「あれは俺っちが勝手に作ってきたって言ったさ」
「だったらナンだよ？」
「王サマがまだ覚えてるなら、…してもいーさ」

がたん。姫発は席を立った。
「あのな、…――」
「王サマ、俺っち」
姫発の言葉を遮って天化が言う。その次に来た言葉に、姫発はほんとうに心臓が止まるんじゃないかと思った。
「誰でもいいなんて言ってねえさ」

「…王サマがしたいんだったら、俺っちもしてぇさ」
そんなことをストレートに言われて、姫発はほんとうに心臓が止まるかと思った。死ぬほど照れた。
湯呑み茶碗をまだ持っていたら間違いなく取り落としていた。それくらい動揺して、なんて言っていいのか判らなかった。
…そこで保健の先生としてだったら、どう振る舞うべきだったんだろう？姫発は後で思った。たしなめるべきだったのかもしれない。はぐらかした方がよかったのかもしれない。
けれど姫発が、どうにも返す言葉を探しあぐねているうちに、天化は続けてこう言ったのだった。
「…王サマとなら、たぶん大丈夫さ」










「…じゃあ、キスしようか」
姫発は軽くそう言った。天化の肩に触れて、唇を合わせる。ほんの一瞬のつもりだった。けど実際はものすごく長かったような気がする。
「終わりさ？」
「…違う」
離れてみて、天化の顔を見ると真っ赤だった。きっと俺も赤いんだろうな、姫発は思った。
「…しようか？」
姫発の言葉に、天化はちょっと笑った………照れ笑いだった。
「…子供扱い、しねえでいいさ」

判ってはいたんですがやっぱり「ふざけんなガッシャーン！！」でしょうか…ええと実は「究極の寸止め」を目指してみたんですが（爆）でもやっぱりマズいよなこの切り方…とは回を進めるごとに思ったのでこの埋め合わせに最終夜と同時になんか裏を、とか最終夜スペシャルパートを隠しファイルで掲載、とかいろいろ考えたんですが、書いてる暇がどこにもないよう〜（泣）というか（しーん）というか確か一週間前くらいに最終夜スペシャルパートの内容を考えた覚えはあるんですが、全部忘れてしまいました（爆）…思い出したらやろうかな…というかそもそも「４４４４で両思いというのをやる前に落としておけば反動が来ないさ！」と思って始めたような気が。だから最初は連載にする気はなかったんですが（苦笑）というわけで４４４４をやります…ハイ。サボってると次のキリ番が回ってしまいますしね。