Bright side of life 桜木みなと

王サマに好きだって言われたとき、体の内と外がひっくり返ったような気がした。
嘘じゃねぇってすぐに分かった。どんな気持ちでいるのかも。
「俺のこと、どう思ってるんだよ？」
「考えたことねぇさ」
考えたこともなかった感情が、どうしてどんなか分かるんだろう。あんたが俺っちを好きでいる。不思議で、どんなに考えてもすごく不思議で、そのことに比べたら、俺っちが王サマを好きか嫌いかなんて、どっかにいっちまうくらいちっぽけだった。
「言ってくれよ、どーなんだよ？！」
「正気さ？何番目でも……本気で言ってるさ？」
「一番に決まってんだろっ」
王サマは俺っちを抱きしめてキスした。膝から下が棒になったみたいに、体がすくんで動けない。
口づけながら王サマは何度も、自分のことをどう思うか聞いた。俺っちに分かるのは、あんたが家族や友達とは違う風に俺っちを好きになったってことだけさ。
「キスすんの、初めてかよ？」
「そうさ」
「イヤか？」
「イヤじゃねぇさ」
「じゃ、好きなんだな」
「……そうさ」
自分が自分じゃなくなったみてーさ。でもそんなのは、小さなことだ。王サマが俺っちを好きになった。

遠征に出てから、初めて二人で寝た。
「天化、今夜一緒にいようぜ」
「ナンでさ」
ナンで、じゃねぇさ。王サマが望むなら何だって、どんな願いだって聞いちまうだろうってこと、言われる前からとっくに分かってた。
王サマがそう言い出したのが、すごく考えた末なのも知ってるさ。
どっちも男だし、寝ちまったら誰にも言い訳はできねぇ。
あんたはいつかお妃を貰わなきゃなんねーし、その時にもし体の関係があったら、お互いきっとひどく傷つく。
でも戦いが始まるまで、あんたは俺っちが封神されるかもしれねぇなんて信じてなかったし、俺っちもあんたが死ぬかもしれねぇなんて思ったことなかった。
それが分かったとき答えは出てたさ。

──けど、王サマは知らねーのさ。あんたが結婚して子供ができて、それでも一緒にいてくれって言われても、あんたが好きでいてくれる限り、俺っちは何だってするに違いねぇこと。

王サマは俺っちに近づくと、いつもの倍もやさしくキスした。壊れ物に触るみたいに背中を抱いて、だけど絶対離す気はねぇんだって、決めているのを指先から感じる。
こわくないわけねぇって、王サマは思ってるさ。だけど少しもこわくなかった。王サマとするのは全然こわくねぇ──そういう自分に驚かされて、俺っちは男なのにと思う。
声がかすれた。
「王サマ、ホントにやるさ？」
「ああ」
乾草の上に腰を下ろすと、王サマの体が体の上に乗った。やっぱり少しもこわくなかった。

王サマは、俺っちの気持ちを不安に思ってる。
でも、あんたが考えてるよりもっとずっと、俺っちはあんたを愛してる。
だから紂王の首を取るのは俺っちじゃねーのさ。
もしもあんたが好きになってくれなかったら、俺っちはもっとワガママだった。今は自分の生き方にスジを通すのと同じくらい、死んだ後のことが大事さ。
「ほんじゃあ──行くさ紂王！！」
あんたがどんな悲しみにも耐えて、やっていける立派な人だって信じてる。あんたのことが大好きさ、王サマ。

ええと…やろうとしていたことは「一人称で王サマが好きな天化くん」でした。そして私には超難関天化一人称（爆）。ハードル高いのでポエムを目指したつもりだったんですが、帯に短したすきに長し…